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スレート屋根の適切な勾配とは?防水性・耐久性を高める設計のポイント
はじめに

屋根の勾配は、屋根の防水性や耐久性を大きく左右します。
勾配は屋根材ごとに適した大きさがあり、それぞれに適した勾配でないと屋根の機能を損なう可能性があるので、適切な勾配で屋根を施工することは非常に重要です。
そこでこの記事では、近年人気の高まっているスレート屋根に注目して、屋根の勾配についてご紹介します。
スレート屋根の勾配にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
勾配とは?その重要性について

「勾配」とは、屋根の傾斜の度合いを示す言葉です。
屋根の機能において、この勾配は非常に重要な役割を果たします。
特にスレート屋根の場合、その特性上、適切な勾配の設計が防水性、耐久性、そして美観に大きく影響します。
屋根勾配が重要な主な理由は以下の通りです。
排水性:雨水を効率よく地上に流し、屋根材の隙間からの浸水を防ぎます。
積雪対策:積雪地域では、雪が自然に滑り落ちるように急勾配にしたり、あるいは雪を屋根に留めるために緩勾配にしたりと、勾配の選択が重要になります。
風圧対策:強風地域では、風圧による屋根材の飛散リスクを考慮した勾配選びが必要です。
美観:建物のデザインや周辺環境との調和を考慮した勾配は、住まいの印象を大きく左右します。
スレートは一枚一枚を重ねて葺く屋根材であるため、その重なり部分から雨水が浸入しないよう、水の流れを意識した勾配が不可欠です。
適切な勾配は、建物を雨風から守り、長寿命化させるための基本中の基本と言えるでしょう。
またスレート屋根に関しては以下の記事で詳しくご紹介しております。
併せてご確認ください。
▶︎スレート屋根の種類と特徴:メンテナンスまでご紹介!
スレート屋根の最低勾配とは?その理由を解説

スレート屋根には、雨漏りを防ぐために守るべき「最低勾配」が存在します。
一般的に、化粧スレート(コロニアル、カラーベストなど)の場合、3寸勾配(約16.7度)以上が推奨されることが多いです。
なぜ最低勾配が必要なのでしょうか。
その最大の理由は「毛細管現象」による雨水の浸入を防ぐためです。
スレート材は、その性質上、重なり合う部分にわずかな隙間が生じます。
勾配が緩すぎると、その隙間に雨水が滞留しやすくなり、毛細管現象によって水が屋根材の裏側や下地へと吸い上げられてしまうリスクが高まります。
これにより、雨漏りや下地の腐食につながる可能性があるのです。
急勾配の屋根は、雨水が勢いよく流れ落ちるため、毛細管現象による浸水リスクを低減できます。
しかし、作業性が悪く、足場設置費用が高くなる傾向があります。
一方、緩勾配の屋根は、作業性が良くコストを抑えやすいですが、防水性能の確保がより重要です。
建築基準法においても、屋根の勾配に関する規定があり、地域や建物の種類によって異なる場合があります。
新築やリフォームの際は、これらの法規を遵守することが必須です。
勾配がスレート屋根の防水性・耐久性に与える影響

スレート屋根の勾配は、その防水性と耐久性に直結する極めて重要な要素です。
勾配の選択一つで、屋根の寿命やメンテナンス頻度が大きく変わると言っても過言ではありません。
防水性への影響
緩勾配の屋根では、雨水が屋根材の上を流れる速度が遅くなり、水が滞留しやすくなります。
この滞留した水が、前述の毛細管現象を引き起こし、スレート材の重なり部分から下地へと浸入するリスクを高めます。
特に、台風などの強風を伴う雨の場合、雨水が屋根材の下に吹き込みやすくなるため、緩勾配ではより厳重な防水対策が必要です。
これに対し、急勾配の屋根は、雨水がスムーズに流れ落ちるため、屋根材の重なり部分に水が滞留する時間が短く、浸水リスクを大幅に低減できます。
これにより、下地の防水シートへの負担も軽減され、より高い防水性能を維持することが可能です。
耐久性への影響
勾配が緩く、雨水が滞留しやすい屋根は、コケやカビ、藻が発生しやすいです。
これらの生物は、スレート材の表面を覆い、水分を保持するため、スレート材自体の劣化を早める原因です。
また、コケなどが根を張ることで、スレート材の表面が剥がれたり、ひび割れが生じたりすることもあります。
さらに、寒冷地で緩勾配の屋根の場合、滞留した雨水が凍結と融解を繰り返すことで、スレート材に「凍害」を引き起こすリスクが高まります。
凍害は、スレート材の内部にまで損傷を与え、強度低下や剥離を招くことがあるため危険です。
適切な勾配は、これらの問題を未然に防ぎ、スレート屋根本来の耐久性を最大限に引き出すために不可欠です。
地域や気候条件が屋根勾配に与える影響

スレート屋根の勾配を決定する際には、その建物が建つ地域の気候条件を考慮することが非常に重要です。
日本は南北に長く、地域によって降水量や積雪量、風の強さが大きく異なるため、一律の勾配が最適とは限りません。
降水量が多い地域
年間を通して降水量が多い地域では、屋根の排水性能が特に重視されます。
このような地域では、雨水を効率よく排出するために、比較的急な勾配が推奨される傾向があります。
急勾配であれば、大量の雨水も素早く流れ落ち、屋根材の隙間からの浸水を防ぎやすくなります。
積雪が多い地域
積雪地域では、屋根勾配の選択がさらに複雑になります。
一般的に、雪を自然に滑り落としたい場合は急勾配が選ばれますが、落雪による事故や隣家への被害を防ぐために、あえて緩勾配にして屋根に雪を留める設計が採用されることもあります。
この場合、雪の重みに耐えられる構造計算や、融雪設備の導入が必須となります。また、雪止め金具の設置も積雪地域では不可欠です。
強風地域
海岸沿いや高台など、強風が頻繁に吹く地域では、風圧に対する考慮が必要です。
屋根の勾配が急すぎると、風を受ける面積が大きくなり、屋根材が飛散するリスクが高まることがあります。
逆に緩すぎると、風が屋根材の下に潜り込みやすくなり、これもまた飛散の原因となります。
強風地域では、勾配と屋根材の固定方法を総合的に判断し、耐風性能の高い設計が求められます。
まとめ
スレート屋根は適切な勾配で施工をすることが、その機能を最大限活かすためにも重要です。
この記事ではスレート屋根における勾配の重要性についてご紹介しました。
お住まいの地域の気候にあった勾配で施工することで、より快適で安心な生活を送ることが可能になります。
ぜひこの記事を参考にして、スレート屋根を施工してください。
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