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初期費用が安い「トタン屋根」と「スレート屋根」の特徴・メンテナンスの注意点
はじめに
 
屋根のリフォームや新築を考える際、誰もが最初に気にするのは「費用」ではないでしょうか。
特に、「初期費用をなるべく抑えたい」「安くても後悔しない屋根材を選びたい」とお考えの方にとって、「トタン屋根」や「スレート屋根」は、必ず選択肢に挙がる材料です。
本記事では、初期費用が安いとされるトタン屋根と化粧スレート屋根について、その特徴や価格、そして本当に知っておくべきメンテナンスの注意点を、プロの視点から徹底的に解説いたします。
費用を抑えながらも、長く安心して暮らせる賢い屋根材選びをするために、ぜひこの記事を参考にしてください。
屋根材選びで失敗しないための基本:初期費用と生涯コストの考え方
 
「一番安い屋根材」を選ぶ前に、屋根材を評価する上で欠かせない2つの「価格」の概念を理解しておく必要があります。
初期費用
これは、建物を新築する際や、屋根を葺き替える際にかかる材料費と工事費を合わせた価格のことです。
トタンや化粧スレートは、材料費が比較的安く、施工性も良いため、この初期費用が安価になります。
そのため、建築コストを抑えたい場合に「安い屋根材」としてよく選ばれます。
生涯コスト
これは長期にわたり住み続ける間に、屋根を健全に維持していくためにかかるメンテナンス費用の総額です。
この生涯コストで屋根材を評価することが、賢い選択の鍵となります。
なぜなら、初期費用が安くても、メンテナンスの頻度が高ければ、その都度出費が重なり、結果的に生涯コストは割高になってしまうからです。
家は長期的に住むものですから、目先の安さだけでなく、長く住む間のトータルコストで比較することが非常に重要になります。
初期費用が最安価な屋根材「トタン屋根」の特徴と注意点
 
トタン屋根は、かつて日本の工場や倉庫、そして住宅の屋根として広く利用されていた金属屋根材です。
トタン屋根の特性とメリット
トタンとは、亜鉛メッキ鋼板のことで、これは薄い鋼板の表面を亜鉛で覆うことで、鉄の弱点である「錆びやすさ」をカバーし、屋外での使用を可能にした材料です。
トタン屋根の最大のメリットは、その初期費用の安さです。
材料費が安価であることに加え、軽量で扱いやすいことから工事費用も抑えられるため、主要な屋根材の中でもっとも安価な部類に入ります。
また、トタン屋根はスレート屋根の約4分の1、瓦屋根の約10分の1と非常に軽量です。この軽さゆえに建物への負担が少なく、耐震性に優れているとされています。
さらに、金属であるため水を吸うことがなく、寒冷地で問題となる水分凍結によるひび割れ、つまり凍害が発生しないという利点もあります。
トタン屋根のデメリットとメンテナンスの注意点
トタン屋根の採用を検討する際に、最も注意すべき点はそのメンテナンス頻度の高さです。
亜鉛メッキが劣化すると、鋼板自体が錆び始め、そのまま放置すれば穴が開いて雨漏りの原因となってしまいます。
この錆びを防ぐためには、定期的な再塗装が不可欠で、一般的に5年~10年ごとに塗装メンテナンスが必要とされています。
この頻繁な塗装メンテナンスが積み重なることで、長期的に見ると生涯コストが大幅に押し上げられてしまうのです。
その他にも、薄い金属板であるため、雨粒が当たる音が響きやすいという遮音性の低さもデメリットとして挙げられます。
コストパフォーマンスに優れる「スレート屋根」の特徴と注意点
 
化粧スレート屋根は、セメントに繊維素材を混ぜてプレスした、板状の屋根材です。
スレート屋根の特性とメリット
化粧スレート屋根は、トタン屋根と並んで初期費用が安価な屋根材の一つです。
また、粘土瓦の約2分の1程度の軽量性も大きなメリットです。建物にかかる負荷が小さいため、耐震性を高めることができます。
さらに、色や形状のバリエーションが豊富で、天然スレートのデザインに模倣しているものもあるため、洋風・和風問わず様々なデザインの建物にマッチしやすいという特徴もあります。
スレート屋根のデメリットとメンテナンスの注意点
スレート屋根も、トタン屋根と同様に、定期的なメンテナンスが不可欠な屋根材です。
表面は塗装で保護されているため、紫外線や風雨の影響により、約10年ごとに色あせやコケの発生が目立ち始めます。
このため、屋根材の美観を維持するためには定期的な再塗装メンテナンスが必要です。
また、スレート屋根材はセメント製品のため、わずかに水を吸収します。
吸収した水分が冬場の寒さで凍結・膨張することで、ひび割れや剥がれが生じる凍害のリスクがあります。
寒冷地でスレート屋根を採用する際は、この凍害対策をしっかり考慮することが重要です。
その他にも屋根材自体が薄いため、屋根の上を歩いたり、飛来物が当たったりした際の衝撃で割れやすい性質を持っています。
またこちらの記事ではスレートと金属屋根の一種であるガルバリウム鋼板との比較を行っております。
ぜひこちらも併せてご確認ください。
▶︎スレートとガルバリウム鋼板:それぞれの屋根材の比較
最適な屋根材の選び方
 
屋根材を選ぶ際は、予算や屋根材の使用期間などの条件を考慮した上で判断することが重要です。
トタン・スレートが向いているケース
初期費用を最優先したい、あるいは建物の軽量化を最優先したい場合には、トタンやスレートは有効な選択肢となります。
トタン屋根は、初期費用を最優先し、頻繁なメンテナンスに抵抗がなく、凍害を避けたい寒冷地の建物に向いています。
一方、化粧スレート屋根は、初期費用を抑えつつデザイン性を重視したい方や、10年ごとの塗装メンテナンスを確実に行える方におすすめできます。
長期的な視点でおすすめできる代替案
生涯コストを考慮すると、トタンの弱点を克服したガルバリウム鋼板がおすすめです。
トタンに比べて耐久性が高く錆びにくいのが特徴で、初期費用はトタンより少し高くなりますが、塗装サイクルが15年~25年と長くなるため、結果として生涯コストは抑えやすくなります。
軽量で緩勾配にも対応できる柔軟性から、現在非常に人気の高い屋根材です。
あるいは、初期費用はかかっても、塗装が不要でランニングコストを徹底的に抑えたい場合は粘土瓦がおすすめです。
瓦は、耐久性・断熱性に優れているため、メンテナンスコストが抑えられるだけでなく、快適な住環境にも寄与します。
まとめ
トタン屋根と化粧スレート屋根は、手軽に導入できる「初期費用の安さ」という大きなメリットを持っています。
しかし、その裏側には、頻繁なメンテナンスとそれに伴う「生涯コストの高さ」が隠れていることを、屋根材を選ぶ際には念頭に置いていただきたいと思います。
ぜひこの記事を参考にして、お住まいにあった屋根材をお選びください。
