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いぶし銀瓦の魅力と秘密:日本の伝統美を支える屋根材のすべて
はじめに

いぶし銀瓦は、日本の伝統的な屋根材であり、粘土を高温で焼成した後に還元炎で「いぶす」ことで、表面に炭素膜を形成させた瓦です。
この独特の製造工程により、他の瓦にはない銀鼠色の深みと、光の当たり方や天候によって表情を変える繊細な光沢が生まれます。
いぶし銀瓦の美しさは、単なる色合いだけでなく、年月を経て風雨に晒されることで生まれる「経年美化」にあります。
この自然な風合いは、周囲の自然環境や建築物と調和し、見る者に静かで深い感動を与えるのです。
いぶし銀瓦が持つ機能性:耐久性、防水性、断熱性、そして環境性能

いぶし銀瓦は、その美しい外観だけでなく、日本の厳しい気候から建物を守る優れた機能性が特徴です。
まず耐久性に関して、厳選された粘土を約1000℃以上の高温で焼き締めることで、非常に硬く、紫外線や風雨、積雪、凍害に強い素材となります。
いぶし工程で瓦の表面に形成される炭素膜は、瓦本体を保護し、酸性雨などによる劣化を抑制する効果も持ちます。
適切に施工されたいぶし銀瓦は、50年から100年以上もの長きにわたりその機能と美観を保つことが可能です。
次に、防水性です。
いぶし銀瓦は、一枚一枚が重なり合うように葺かれる「瓦葺き」という独自の工法によって、優れた防水性能を発揮します。
瓦の形状自体が雨水を効率的に軒先へと導くように設計されており、瓦と瓦の間に空気層が生まれることで毛細管現象による水の吸い上げも防ぎます。
これにより、たとえ強風を伴う大雨であっても、内部への水の浸入を効果的に防ぎます。
さらに、断熱性や遮音性も特筆すべき機能です。
瓦自体の厚みと、屋根全体に形成される瓦と下地の間の空気層が、外気の熱を遮断し、室内の温度上昇を抑制する効果があります。
夏は涼しく、冬は暖かく保つことに貢献するため、冷暖房費を削減することも可能です。
また、瓦の重さと空気層は、雨音や外部からの騒音を吸収・軽減する高い遮音効果も発揮し、快適な居住空間を提供します。
加えて粘土という自然素材から作られるいぶし銀瓦は、製造過程での環境負荷が比較的低く、廃棄の際も土に還るため、環境に優しい屋根材と言えます。
高い耐久性により、頻繁な交換が不要であることも、資源の節約に貢献します。
いぶし銀瓦の製造工程:伝統技術と現代の工夫が織りなす品質

いぶし銀瓦の製造は、熟練の職人技と現代の技術が融合した、非常に繊細なプロセスを経て行われます。
その品質は、厳格な工程管理によって支えられています。
まず、粘土の選定と精製です。
瓦に適した粘り気と強度を持つ良質な粘土が厳選され、不純物を取り除き、均一な品質になるよう精製されます。
この段階で瓦の基本的な強度と耐久性が決まります。
次に、成形です。
精製された粘土は、瓦の形状にプレス成形または押し出し成形されます。
この際、瓦一枚一枚の寸法精度が非常に重要となり、後の施工のしやすさや防水性能に直結します。
現代では、最新の機械が導入され、均一で高品質な瓦が効率的に生産することも可能です。
そして、最も特徴的で、いぶし銀瓦の「命」とも言えるのが、焼成工程です。
成形された瓦は、まず乾燥炉でゆっくりと水分を抜き、その後、約1000℃以上の高温で「本焼き」されます。
これにより粘土が陶器のように硬く焼き締まり、高い強度と耐水性を獲得します。
本焼きの最終段階で行われるのが、還元焼成(いぶし工程)です。
窯の酸素供給を意図的に絞り、窯内に炭素を多く含む煙を充満させます。
この無酸素状態に近い環境で、瓦の表面に微細な炭素粒子が付着し、独特の銀鼠色の炭素膜が形成されます。
この炭素膜が、いぶし銀瓦特有の光沢と風合いを生み出すだけでなく、瓦本体の保護層としても機能するのです。
いぶし銀瓦のメンテナンスと長寿命化の秘訣:プロの視点から

いぶし銀瓦の持つ独特の美しさと優れた機能性を長く維持するためには、適切なメンテナンスが不可欠です。
いぶし銀瓦はメンテナンスフリーに近いと評されることもありますが、全く手入れが不要というわけではありません。
定期的な点検と適切な対処が、瓦屋根の長寿命化と建物の保護に繋がります。
年に一度は専門業者による定期点検をおすすめします。
点検では、以下の点を確認します。
瓦のズレや割れ
強風や地震、経年劣化によって瓦がズレたり割れたりすることがあります。
これらは雨漏りの原因となるため、早期発見・早期補修が重要です。
苔やカビの発生
日当たりが悪い場所や湿気の多い環境では、瓦の表面に苔やカビが発生することがあります。
これらは美観を損ねるだけでなく、瓦の劣化を早める可能性もあります。
軽度の場合は専門業者による高圧洗浄などで除去できますが、瓦を傷つけないよう注意が必要です。
漆喰の劣化
棟瓦の下などに使われる漆喰は、風雨に晒されることで劣化し、ひび割れや剥がれが生じることがあります。
漆喰の補修は、棟瓦の安定性を保つ上で非常に重要です。
雨樋の詰まり
落ち葉やゴミなどで雨樋が詰まると、雨水が適切に流れず、屋根や外壁に悪影響を及ぼす可能性があります。
定期的な清掃が必要です。
これらの問題の早期発見・対処は、大規模な修繕費用を抑えることに繋がります。
特に、瓦のズレや割れの補修、苔や汚れの除去、漆喰の補修などは、屋根上での作業となるため、専門知識と安全対策が必要です。
ご自身での作業は危険を伴うため、必ず信頼できる専門業者に依頼してください。
また屋根瓦のメンテナンスに関しては、以下の記事でもご紹介しております。
ぜひ併せてご覧ください。
▶︎屋根瓦にメンテナンスは必要?:メンテナンス方法やタイミングをご紹介!
まとめ
いぶし銀瓦は耐久性、防水性、断熱性、遮音性といった基本的な機能において非常に優れており、日本の厳しい気候条件下においても建物を長きにわたり保護します。
また、自然素材である粘土を主原料とし、メンテナンスコストが低いことから、環境負荷の少ないサステナブルな建築材料としてもその価値が再認識されています。
初期投資は他の屋根材より高くなるかもしれませんが、長期的な視点で見れば、その優れた耐久性とメンテナンス性が、住まいの価値を確実に高めます。
ぜひこの記事を参考にして、お家に適した瓦をお選びください。
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