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唐草は屋根の寿命を決める「縁の下の力持ち」!その役割と重要性を解説
はじめに
 
唐草とは一般の方々にはなかなか知られていない部分ですが、屋根のトラブル、特に雨漏りの原因の多くは、この唐草の劣化や施工不良から始まるケースが少なくありません。
そこで、本記事では、屋根の「縁の下の力持ち」である唐草について、その役割、種類、そしてメンテナンスの重要性を、専門用語を交えながらも分かりやすく徹底解説いたします。
唐草の基本知識:屋根に欠かせない板金部材
 
まずは、唐草が屋根のどの部分を指し、なぜその名前で呼ばれているのかという基本から見ていきましょう。
唐草とは?
屋根の唐草とは、軒先やケラバと呼ばれる屋根の端に取り付けられる、L字型やコの字型の金属製の板金部材のことを指します。
主に、ガルバリウム鋼板などの耐久性の高い金属でできています。
瓦やスレート、金属板といった屋根材を葺き始める際、一番下の軒先側の端に差し込まれる部材です。
雨水対策における初期段階の部材として重要な役割を担っています。
また屋根の板金に関してはこの記事でも詳しく紹介しております。
▶︎屋根板金について:各部位の名称や役割についてご紹介!
なぜ「唐草」という名前になったのか?
屋根の部材に、なぜ植物のツルが絡み合った模様を意味する「唐草」という名前が付けられたのでしょうか。
これは、昔の日本の家屋において、軒先に取り付けられていた軒瓦の先端に、装飾として唐草模様を施す習慣があったことに由来すると言われています。
その美しい模様が付いた瓦の部分を指していた名称が、時を経て、現代ではその瓦の下に設置される水切り用の板金部材を「唐草」と呼ぶようになったのです。
唐草の設置場所と2つの種類
 
唐草は、屋根の端にある「軒先」と「ケラバ」の2箇所に設置されます。
この2箇所は屋根の構造上、特に雨水が集中しやすい部分であり、それぞれが持つ役割は微妙に異なります。
軒先唐草
軒先唐草は、屋根の最も低い位置で、壁から外側に張り出している軒の先端部分に取り付けられます。
屋根を伝って流れてきた雨水を、効率よく雨樋(あまどい)へ誘導することがその主な役割です。
この誘導によって、軒先の木材部分に雨水が直接触れてしまうのを防ぎ、腐食から守る重要な機能を果たしています。
ケラバ唐草
一方、ケラバ唐草は、屋根の斜めの端、切妻屋根(きりづまやね:三角屋根)の妻側や、片流れ屋根の側面など、軒先の出ていない部分の端に取り付けられます。
軒先とは異なり雨樋がないため、屋根の側面から吹き込む雨風を防ぐことが主な役割です。
ケラバの下にある木材部分(破風板など)を雨水から保護する役割を担っています。
屋根の寿命を延ばす!唐草の持つ3つの重要な役割
 
唐草の役割は、単に水切りをするだけにとどまりません。
屋根の機能全体を支える、非常に多面的な役割を持っています。
役割その1:雨仕舞いの「要」
唐草の最も重要な役割は、「雨仕舞い」を確実に行うことです。
ここでいう雨仕舞いとは、屋根や外壁などに降った雨水を、建物内部に浸入させず、適切に外部へ排水させるための工夫や処理のことです。
唐草は、屋根材の下に敷かれた防水シート(ルーフィング)の雨水を最終的に受け止め、外部へ導く「水路の出口」としての役割を担っています。
もし唐草がなければ、雨水は防水シートの端を伝い、屋根の下地材である野地板(のじいた:屋根の下地となる板)や、軒先の木材に直接触れてしまい、腐食を進行させてしまいます。
唐草こそが、この雨水の最終防衛ラインとなっているのです。
役割その2:軒天・破風板の保護
唐草は、軒先の雨水を適切に雨樋に流すことで、軒天(のきてん:軒裏の天井)や破風板(はふいた:屋根の側面を覆う板)といった、屋根を構成する木造部分を保護します。
これらの木材部分が常に水に濡れると、塗膜が剥がれたり、木材が腐食したり、カビが発生したりする原因になるため注意が必要です。
唐草が正常に機能することで、軒天や破風板の耐久性も向上し、結果として家全体のメンテナンスサイクルを長く保つことにつながります。
役割その3:屋根材のズレ防止と固定
金属屋根材や瓦など、屋根のタイプに関わらず、唐草は屋根材の最下端を支える土台としての役割も果たします。
特に、スレート屋根材や金属屋根材は、軒先唐草を設置した上に葺き始められることが多いため、唐草が屋根材の正確な位置を決め、強風や地震の際でも屋根材がズレたり滑り落ちたりするのを防ぐストッパーのような働きを担っています。
唐草が劣化するサインと放置の危険
 
唐草は金属製であるため耐久性は高いものの、常に雨風に晒されている過酷な環境にあるため、時間の経過とともに劣化が進んでいくのは避けられません。
唐草の主な劣化サイン
唐草の主な劣化サインとして、まず金属であるゆえにサビの発生が挙げられます。
サビが進行すると唐草自体に穴が開き、雨水が裏側へ浸入する原因となります。
また、強風や飛来物、屋根に積もった雪の重みなどにより、板金が歪んだり、浮き上がったりすることも少なくありません。
この歪みは、雨水が適切なルートで流れない「水跳ね」を引き起こす原因となります。
さらに、唐草を固定している釘やビスが、木の収縮などにより緩んだり抜けたりすると、唐草が浮き上がり、そこから雨水が浸入しやすくなります。
劣化を放置することの致命的な危険性
唐草の劣化は、屋根全体にとって致命的な問題に発展するリスクを秘めています。
唐草の裏側に水が浸入すると、その下にある野地板や垂木(たるき:屋根を支える骨組み)といった屋根の構造体に直接水が触れてしまい、構造体が水を吸い続けると、木材が腐食して強度が低下します。
これにより、地震や強風に対する抵抗力が大幅に落ちるだけでなく、最悪の場合、屋根の崩落といった重大な被害に繋がる危険性もあるのです。
加えて、湿った木材はシロアリにとって格好の餌場となるため、唐草の劣化による浸水が、家全体のシロアリ被害の引き金となるケースも少なくありません。
まとめ
屋根の「唐草」は、普段の生活では目に触れることのない、まさに「縁の下の力持ち」です。
しかし、この小さな板金部材こそが、雨水を操り、大切な住まいを雨漏りや腐食から守る屋根の防衛システムの中核を担っています。
唐草の施工の良し悪しは、そのまま屋根の寿命に直結します。
ぜひこの記事を参考にして、快適なお住まいを実現してください。
